韓国の美容医療やスキンケア市場を中心に、急速に注目を集めている「PDRN」。美容クリニックで行われる「サーモン注射」や「リジュラン」といった施術をきっかけに認知が広がり、近年ではPDRNを配合した美容液、クリーム、シートマスクなども数多く登場しています。
株式会社PR TIMESの調査では「PDRN」に関連するプレスリリース数は前年比1.5倍になっていたりと、まさに話題の成分です。(※1)
昨年公開したスペシャル記事では簡単な説明をしていました。
これまでPDRNは、主にサーモンやマスなどの魚類由来DNAを利用した素材として知られてきました。しかし現在は、外用PDRNの浸透性や作用メカニズムに関する新たな研究が発表されるとともに、植物をはじめとする非動物由来PDRNの開発も進んでいます。
PDRNは今、「サーモンDNA」という一つの美容成分から、由来、分子量、製造技術、皮膚送達までを含めた、より幅広い核酸系化粧品原料のカテゴリーへ進化しつつあります。
本記事では、PDRNの基本的な定義、美容市場で人気に火が付いた背景、2026年に報告された外用PDRNの新知見、そしてTriBeauteが注目する植物由来PDRNについて詳しく解説します。
PDRNとは?
DNAを細かく分解して得られる核酸系素材
PDRNは「Polydeoxyribonucleotide」の略称で、日本語ではポリデオキシリボヌクレオチドと呼ばれます。
生物の細胞に含まれるDNAを抽出・精製し、一定の長さに断片化して得られる素材です。従来の医療用PDRNや美容医療製剤では、主にサーモンやマスの生殖細胞由来DNAが利用されてきました。
PDRNは、使用者の遺伝情報を書き換えるものではありません。高度に精製されたDNA断片を、細胞や組織の修復環境を支える素材として活用するものです。

組織修復分野から美容へ
PDRNは、もともと創傷や熱傷、糖尿病性潰瘍などの組織修復を目的として研究されてきました。
代表的な作用として、アデノシンA2A受容体に関連するシグナルを介した炎症調整や血管新生の促進、DNA材料を再利用するサルベージ経路のサポートなどが知られています。

肌へコラーゲンを直接補給するのではなく、細胞が修復や再構築を行うための環境を整える成分として位置付けられます。
PDRN人気に火が付いたきっかけ
韓国の美容医療で広がった「サーモン注射」
PDRNが美容成分として広く知られるようになった背景には、韓国の美容医療市場があります。
韓国では、肌全体のハリ、乾燥、小じわ、赤みなどを総合的に整えるスキンブースターが普及し、サーモン由来ポリヌクレオチドを使用した「リジュラン」も人気を集めました。
リジュランは厳密にはPNを使用した製剤ですが、一般市場ではPDRNとPNが広い意味で「サーモンDNA美容」として紹介されることもあります。
美容医療からホームケア化粧品へ
美容医療での認知拡大を受け、美容液、クリーム、アイクリーム、マスクなど、外用化粧品への応用も進みました。
一方、注入製剤とは異なり、化粧品は皮膚表面へ塗布するものです。そのため、外用PDRNについては、分子量の大きなDNA断片がどこまで皮膚へ届き、どのように作用するのかが課題とされてきました。
2026年に発表された外用PDRNの新知見
PLOS ONEに掲載された最新研究
2026年7月、外用PDRNの作用メカニズム、皮膚への移行、光老化肌への有用性を検証した研究が『PLOS ONE』に掲載されました。
研究では、平均分子量850kDa以下、平均断片長約1,200塩基対のサーモン由来PDRN「PDRN-850K」が使用されました。
ヒト真皮線維芽細胞、再構築皮膚、ブタ皮膚、紫外線ダメージを受けた皮膚モデルに加え、31名を対象としたヒト試験まで段階的に評価されています。
複数の経路を介してECM関連遺伝子を促進
ヒト真皮線維芽細胞を用いた試験では、PDRNによってPI3K–Akt経路とTGF-β/Smad経路が活性化され、オートファジーに関連する変化も確認されました。

さらに、Ⅰ型コラーゲンに関わるCOL1A1、Ⅲ型コラーゲンに関わるCOL3A1、エラスチンに関わるELNの遺伝子発現が増加しました。
従来、PDRNはA2A受容体やサルベージ経路を中心に説明されてきましたが、今回の研究では、細胞の生存、コラーゲン合成、細胞内恒常性に関わる複数の経路から作用が検討されています。
外用PDRNは皮膚の生きた層へ届くのか
再構築表皮やブタ皮膚を用いた試験では、塗布後の時間経過とともにPDRNに関連するシグナルが皮膚深部へ広がる様子が確認されました。
また、細胞による取り込みを阻害するとシグナルが低下したことから、単純な拡散だけでなく、細胞の取り込み機構が関わる可能性も示唆されています。
ただし、この結果をすべてのPDRN原料へ一般化することはできません。研究で使用されたのは、分子量や断片長が規格化された特定のPDRNです。
それでも、「高分子のPDRNは塗布しても届かないのではないか」という疑問に対し、具体的なデータが示された点は大きな進展といえます。
vs レチノール
紫外線を照射した皮膚モデルでは、PDRN配合クリームにより、複数のコラーゲン、エラスチン、フィブリリン1などの増加が確認されました。
さらに、35~55歳の女性31名を対象とした28日間の左右比較試験では、顔の片側へ0.1%PDRN配合アイクリーム、反対側へ0.1%レチノール配合アイクリームを使用しました。
その結果、PDRN側では、目尻のシワ、真皮の厚み・密度、目袋、弾力などの指標が改善しました。複数の項目でレチノール側を上回る変化も報告されています。

ただし、対象者数や試験期間は限定的であり、「PDRNがレチノールより優れている」と一律に結論付けることはできません。特定の処方条件において得られた、有望な初期データと捉える必要があります。
外用PDRNは「質」で選ぶ時代へ

今回の研究により、外用PDRNの評価は、「高分子だから塗っても意味がない」と考える段階から、分子量、断片長、濃度、処方、塗布時間などを適切に設計する段階へ進んだといえます。
今後は単にPDRNを配合しているかではなく、次のような原料特性が重要になります。
・由来
・DNAの純度
・平均分子量と断片長
・製造・精製方法
・配合濃度
・処方中での安定性
・皮膚移行試験やヒト試験の有無
同じPDRNという名称でも、原料や処方によって作用は異なる可能性があります。成分名の話題性だけでなく、規格とエビデンスに基づいた製品設計が求められます。
PDRNはサーモン由来だけではない
広がる植物由来PDRN
PDRNはサーモンやマス由来の素材を中心に発展してきましたが、近年では高麗人参、シャクヤク、バラなど、植物から得たDNAを利用する植物由来PDRNの研究も進んでいます。
植物由来PDRNについても、皮膚細胞の増殖、創傷閉鎖、バリア関連タンパク質、皮膚の保湿や弾力などに関する評価が報告され始めています。
現時点では、医療分野を中心とした研究実績はサーモン由来PDRNの方が豊富です。一方、植物由来PDRNも、新たな化粧品原料のカテゴリーとして注目されています。
植物由来PDRNが求められる理由
化粧品市場では、機能性だけでなく、原料の由来や製造背景も重要な価値となっています。
植物由来PDRNには、次のような特長があります。
・非動物由来製品への対応
・ヴィーガン化粧品への応用
・水産資源への依存低減
・サステナブルな商品設計
・由来植物を生かしたストーリー開発
・従来のサーモン由来PDRNとの差別化
植物由来PDRNは、サーモン由来原料の単なる代替ではありません。美容医療発想の先進性と、植物由来素材の親しみやすさやストーリー性を組み合わせられる点が魅力です。
ただし、植物由来であればすべて同じ作用を持つわけではありません。植物の種類、DNAの純度、断片長、分子量、製造方法、試験データを原料ごとに確認する必要があります。

TriBeauteではPDRNのラインナップを拡充
天然PDRN製品を提案
PDRN市場では、外用剤としての研究が進むと同時に、原料の由来も多様化しています。
TriBeauteでは、こうした変化を踏まえ、植物由来PDRNのラインナップ拡充を進めています。
植物由来PDRNは、美容医療で培われたPDRNの先進的なイメージを生かしながら、非動物由来、サステナビリティ、ヴィーガン、植物のストーリーといった新しい価値を加えられる原料です。
次世代PDRN
また、サーモン(動物)由来でも、植物由来でもない、次世代のPDRNとして、合成PDRN:tFNAも提案しています。発酵法で製造された合成の核酸を四面体型にすることによって浸透性を向上させたユニークなピラミッド型PDRNです。
老化の特徴に沿った豊富なデータがあり、ロンジェビティのコンセプトにも最適ですし、海外ではヴィ―ガンPDRNとして訴求されているなど、広がりを見せています。
以上、2026年に特に注目を集めている美容成分のひとつPDRNについて解説しました。商品作りのアイデアにぜひお役立てください!
※1 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001687.000000112.html